作業環境測定の定義、労働安全衛生法に基づく作業環境測定を行うべき作業場、作業環境測定基準で定める「管理濃度」を紹介しています。
個人サンプリング法による作業環境測定・評価について解説しています。
作業環境測定士の業務の範囲や資格要件について簡単に紹介しています。
作業環境測定に関連する法令・規則や作業環境測定結果報告書(モデル様式)を掲載しています。会員専用ウェブサイトでは、最新情報を逐次更新しています。
作業環境測定にまつわる用語を和英対比表にまとめました。
作業環境中に有害な因子が存在する場合には、その有害な因子を、除去するか、ある一定の限度まで低減させるか、またはこれらの対策だけでは有害な因子への労働者のばく露を十分な程度まで低減させることができない場合には、保護具や保護衣等の個人的なばく露防止のための手段を利用すること等によって、その有害な因子による労働者の健康障害を未然に防止することが必要です。
作業環境中に存在することがある有害な因子としては、有機溶剤・鉛およびその化合物・特定化学物質等の有害な化学物質、じん肺の原因となる粉じん等の有害な物質のほか、電離放射線、電磁波、有害光線、騒音、振動、高温・低温、高湿度等の物理的因子等もあります。また、有害な化学物質等の中には感作性(人に感作[ある抗原物質に対して過敏な状態にすること]を生じさせるおそれのある性質のこと)があるものもあり、これらの感作性のある化学物質等についての作業環境管理には、その化学物質等に過敏な反応を起こすことのある労働者についての特別の注意が必要です。
「作業環境管理」を進めるためには、作業環境中にこれらの有害な因子がどの程度存在し、その作業環境で働く労働者がこれらの有害な因子にどの程度さらされているのかを把握しなければなりません。この把握をすることを広い意味で作業環境測定といっています。
労働安全衛生法第2条では、「作業環境測定」とは「作業環境の実態を把握するため空気環境その他の作業環境について行うデザイン、サンプリングおよび分析(解析を含む)をいう」と定義されています。
同法第65条第1項では、「事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令(=労働安全衛生法施行令第21条;下表)で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、およびその結果を記録しておかなければならない」と、同条第2項では、「前項の規定による作業環境測定は、厚生労働大臣の定める作業環境測定基準に従って行わなければならない」こと、また、同法第65条の2では、「事業者は、前条第1項...の規定による作業環境測定の結果の評価に基づいて、労働者の健康を保持するため必要があると認められるときは、厚生労働省令で定めるところにより、施設または設備の設置または整備、健康診断の実施その他の適切な措置を講じなければならない」、「事業者は、前項の評価を行うに当たっては、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める作業環境評価基準に従って行わなければならない」、「事業者は、前項の規定による作業環境測定結果の評価を行ったときは、厚生労働省令で定めるところにより、その結果を記録しておかなければならない」とされています。
これらが、労働安全衛生法で義務付けられている作業環境測定の内容ですが、前述しましたように、「作業環境測定」とは、「作業環境管理」を進めるための前提となる、作業環境中に有害な因子がどの程度存在し、その作業環境で働く労働者がこれらの有害な因子にどの程度さらされているかを把握することであることを忘れてはなりません。
★ ○印(1・6ロハ・7・8・10)は、作業環境測定士による測定が義務付けられている指定作業場であることを示す。(作業環境測定法施行令第1条「指定作業場」)
★ ※印(1・7・8・10)は、作業環境評価基準が適用される作業場を示す。
(注)
CAS登録番号、日本産業衛生学会による許容濃度勧告も盛り込んだ詳細な表は、会員専用ウェブサイトに掲載されています。
令和2年1月、作業環境測定法施行規則および関係告示の改正があり、作業環境測定の手法に「個人サンプリング法」という新しいデザイン・サンプリングの手法が追加されました。
個人サンプリング法は、従来の手法(従来法)では試料採取機器(サンプラー)を定点に置いて空気中の有害物を採取していたのに対し、サンプラーを有害物取扱作業に従事する作業者の身体に装着して空気中の有害物を採取し分析します。すなわち定点でなく移動しながらのサンプリングになります。
個人サンプリング法を採用するか否かは事業者の任意の選択によることとされています。個人サンプリング法は一部の先行導入物質・作業について、令和3年4月1日から導入されました。将来は全作業に拡大することとされています。
個人サンプリング法による測定は、従来法のA測定に相当する作業場の空気中の平均的な有害物の分布状態を把握するC測定と、従来法のB測定に相当する高濃度ばく露を把握するD測定から成っています。これらの測定で行うサンプリングの方法は以下のとおりです。なお、サンプラーのセッティングが違うだけで、作業者に装着するサンプラーの種類は従来法と同様で対象物質に応じて作業環境測定基準で指定されたものです。
作業環境の評価は、従来法による測定結果に基づきおおむね適切にされていますが、作業環境の空気中への有害物の発散の変動が大きい場合や作業者の移動が大きく場の測定のデザインが困難な時などは適切な評価が得られない場合があります。個人サンプリング法は、有害物の発散状況の変動等の適正な測定の阻害要因があっても作業者の呼吸域の空気を正確に測定することができ、また、リスクアセスメントと作業環境測定を一括して促進することができるものです。
個人サンプリング法は当初、(1)塗装作業など、有機溶剤の発散源の場所が一定しない作業が行われる場所に係る測定と、(2)有害性が高く、管理濃度が低い物質を製造・取り扱うことなど労働者の動きにより呼吸域付近の空気環境がその他の作業に比べて相対的に大きく変動すると考えられる場所に係る測定に限られていました。
その後、作業環境測定の対象は下記のように拡大し、作業環境測定以外でも、有効な呼吸用保護具選択のために行う「溶接ヒューム」の測定や、作業環境測定の結果、第3管理区分に区分された場所における測定においても用いられるようになりました。
個人サンプリング法によるデザイン・サンプリングについては個人サンプリング法について新たに登録を受けた作業環境測定士または作業環境測定機関が行うこととされております。なお、分析の実施者の資格は従来法と同じです。個人サンプリング法による測定結果が出たら従来法と同様に作業環境評価基準に基づき評価を行います。この評価の方法も、C測定はA測定に準じて、D測定はB測定に準じて第1・第2・第3管理区分のいずれかに区分して行います。第1の場合は現状維持、第2・第3の場合は改善努力というのも従来法と同じです。※モデル様式はこちら
作業環境測定法第2条では、「作業環境測定士」とは、「第1種作業環境測定士および第2種作業環境測定士をいう」と定義されているとともに、「第1種作業環境測定士」は、「厚生労働大臣の登録を受け、指定作業場について作業環境測定の業務を行うほか、第1種作業環境測定士の名称を用いて事業場(指定作業場を除く。次号※において同じ)における作業環境測定の業務を行う者をいう」と定義されています。
※「次号」とは、第2種作業環境測定士の定義でも同じく「指定作業場を除く」とされていることを示します。
また、「第2種作業環境測定士」は、「厚生労働大臣の登録を受け、指定作業場について作業環境測定の業務(厚生労働省令で定める機器を用いて行う分析[解析を含む]の業務を除く)を行うほか、第2種作業環境測定士の名称を用いて事業場における作業環境測定の業務を行う者をいう」と定義されています。より具体的には、この「厚生労働省令で定める機器」としては、作業環境測定法施行規則第2条により、簡易測定器※以外の機器とされています。
※(1)検知管方式によりガスまたは蒸気の濃度を測定する機器、(2)グラスファイバ-ろ紙を装着して相対沈降径が概ね10マイクロメ-トル以下の浮遊粉じんを重量法により測定する機器を標準として較正された浮遊粉じんの重量を測定する機器―等とされています。
これらの(第1種作業環境測定士および第2種作業環境測定士についての)定義の後段の部分で「...事業場(指定作業場を除く)」とされているのは、法令上の文言の整理を厳密にしてあるものですが、つまり、第1種作業環境測定士または第2種作業環境測定士の名称を用いて作業環境測定の業務を行う際には、その業務の範囲は、指定作業場には限られないという意味と解されます。
実際的には、
第1種作業環境測定士については、登録の区分として、「鉱物性粉じん」「放射性物質」「特定化学物質」「金属類」「有機溶剤」の5種類の区分があり、それぞれの登録を受けた区分ごとに作業環境測定の業務の全部が行えます。
第2種作業環境測定士については、作業環境測定の業務のうち、デザイン、サンプリングおよび簡易測定器を用いた分析(解析を含む)が行えます。
これらのほかに個人サンプリング法の登録の区分があり、この登録を受けた作業環境測定士は個人サンプリング法によるデザイン、サンプリングが行えます。
作業環境測定士の資格要件は、作業環境測定法ならびに作業環境測定法施行令および作業環境測定法施行規則その他の命令で規定されていますが、原則として「作業環境測定士試験に合格し、かつ、都道府県労働局長または厚生労働大臣もしくは都道府県労働局長の指定する者が行う講習を修了した者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者で、厚生労働省令で定めるもの」とされています。なお、指定作業場における作業環境測定については、(1)事業者が自ら雇用している作業環境測定士、または、(2)作業環境測定機関に所属する作業環境測定士のみが実施できると定められています(作業環境測定法第3条)。
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